ボッテガヴェネタは日本でも知名度の高いブランドの1つでして、財布やバッグをお使いの方は多いかと思います。
私も使っているブランドではありますが、長年使用していると革は非常に柔らかくなり、手触りも良いアイテムです。
主に使われている革は「ラム」や「カーフ」と言った柔らかい素材を使っている事が多く、財布の角や縁またはバッグの角や縁がいつの間にかスレてしまっている事が良くあります。
ボッテガがスレて傷が残ってしまった!
ボッテガのバッグや財布に限らずですが、縁取りの革部分に写真のような擦れた傷が出来てしまう事がありますよね。
この縁取りの丸い革部分は「パイピング」と呼ばれ、形を形成する役割や見た目を良くするデザイン的な要素があります。
写真のような黒いバッグでは、革の表面は真っ黒ですが革の内部までは真っ黒になりませんのでスレて表皮がなくなってしまうとグレーっぽいような感じで見えてしまいます。
ご自身でマジックや靴墨を塗ってメンテナンス!?
黒いバッグや財布ですと、スレて色が落ちてしまった時に思いつくのが「油性マジック」や「靴墨」。
確かに私も修理屋さんをしていなければ、そんな考えが思いつくような気もします。
ですが!!!
それははっきり言ってその場凌ぎでしかない方法となります。
理由として、上の写真のようにスレている部分は先程も書いたように表皮が削れてしまっている状態ですので、革にとっては裸同然の状態。
見た目は黒くなったとしても防具は何も身に着けていないですので、その部分から革が乾燥して破れやすくなったり、さらに劣化が広まってしまう事もあります。
マジックや靴墨はあくまでも色が付くだけで、表皮は形成してくれませんのでご注意下さい。(光沢も違いますしね。)
ボッテガバッグのメンテナンス
それでは当店のメンテナンスはどのような事をするのかご紹介します。
このように他と比べて色が落ちている部分は拭き取りクリーニングをして余計な油分や汚れを除去します。(全体メンテナンスであれば全体的に拭き取りクリーニングをします。)
これは、余計な物が付着していると塗料が定着せずにただ色が乗っかっているだけになってしまいますので下処理として行います。
次に先程から何回も書いている表皮形成です。表皮があるのとないのでは、この後の色付けや艶調整に大きく影響しますし、仕上がりも変わってきますので極力必要最低限の範囲で部分補修をします。全体的に表皮形成をする業者もあるかと思いますが、私は元の質感を残したいので特に質感の良い素材に対しては慎重に修理方法を選定しております。
表皮を形成後は補色をして全体の色バランスを整えて、最後に色止め(艶調整)をして仕上がりになります。
ただ色を塗るだけではないのが革修理専門店
当店にご相談頂く型の中には、「以前他の修理店にバッグ修理を依頼したが、質感が悪くなった」とバッグの質感や手触りを気にされる方もいらっしゃいます。このようなスレ傷や色褪せは見た目気にならなくなって欲しいのは当然の事であり、さらには質感を重視してメンテナンスするかどうかも鍵となります。
ただ色を付けて見栄えを良くするだけであれば色を塗るだけです。ですが、色を塗り重ねていけば質感も悪くなり、革の良さも損なわれてしまいます。
いかに塗膜を薄くして質感や革本来の良さを残すのかが修理業者の良し悪しにつながるかと思います。
勿論、当店で修理すれば質感が一切変わらないと言っている訳ではなく、塗装修理をすれば少なからず質感は変わってしまいます。そのデメリットを少しでも軽減する為に日々努力をしている事をご理解頂きたいと思います。
ボッテガバッグのメンテナンス(Before-After)
それでは今回修理したボッテガヴェネタのバッグを写真にてご紹介致します。
まずは修理前の写真です。
今回のご依頼はバッグ全体ではなく、主に角や縁のパイピング部分がメインとなります。
次に修理後の写真です。
このような仕上がりになりました。
革の毛羽立ちが多かった角部分については極力寝かせながら表皮形成を行い、その後周囲の色に合わせながら補色をしております。
写真では質感は分かりませんが、例えば修理後の写真を見てもパイピング部分の革のシボ(シワ)も見えているかと思います。塗料を塗り過ぎて厚くなっているとシボも一緒に埋まってしまい見た目ツルっとしたような感じになります。革が破れてしまっているとシボを残す事も不可能ですが、この程度のスレ傷であればほとんど周囲のシボ感と大差なくメンテナンスする事が可能になります。
今回のご紹介は以上となります。是非革製品の修理やメンテナンスは当店にご相談下さい。
お待ちしております。