ルイ・ヴィトン ヴェルニバッグのヌメ革に色補修を施した修理事例
ルイ・ヴィトンのヴェルニラインは、上品な光沢感と華やかなカラーが魅力の人気シリーズです。その中でも、ハンドルやパイピング部分などに使用されている「ヌメ革」は、ナチュラルな風合いと経年変化を楽しめる素材として知られています。
今回は、ヴェルニバッグのヌメ革部分にシミや汚れが広範囲に目立ち、全体の印象が悪くなってしまったということで、補修のご依頼をいただきました。但し、バッグのヌメ革全てではなく付属パーツ(ネームタグとポワニエ)とハンドル下のヌメ革のみとなります。
※同時にエナメルの修理も行っております。

ヌメ革とは?その特徴と扱いの難しさ
ヌメ革とは、植物のタンニンでなめされた天然皮革で、表面にコーティングなどの加工がほとんど施されていないのが特徴です。そのため、非常にデリケートで、手の油分や水分、紫外線などの影響を受けやすく、使うごとに色が濃くなり、独特の「エイジング(経年変化)」を楽しむことができます。
しかしながら、そのナチュラルさゆえに、水ジミや黒ずみ、色ムラが発生しやすく、汚れがついた際には元に戻すのが難しいという側面もあります。今回のように、長年使用されたヴェルニバッグでは、ハンドル部分のヌメ革が黒ずんだり、シミが点在している状態でした。

修理の選択肢とお客様のご要望
通常、ヌメ革のシミや汚れを完全に取り除くことは非常に難しく、染み抜きやクリーニングでは限界があります。そのため、ある程度の補修となると「色付け(染色)」を施す方法が現実的です。
ただし、色付けを行うとヌメ革本来の風合いは損なわれ、エイジング(経年変化)も起こりにくくなります。つまり、ナチュラルなヌメ革ではなく、塗装された仕上がりになるため、見た目や質感が変わることをご了承いただく必要があります。
今回のお客様もこの点をご理解のうえで、「できるだけ綺麗に見えるようにしてほしい」とのご要望をいただきました。色はもともとのヌメ革に近いナチュラルベージュで統一し、修理をしない部分と調和するように調色して補修を行いました。
修理内容と仕上がり
まずは表面の汚れを丁寧に除去し、黒ずみやシミを可能な限り取り除いた上で、専用の下地処理を施しました。その後、ヌメ革本来の風合いを損なわないよう、柔らかい塗膜になるように調整しながら色付けを行っています。最後はトップコートを塗布し、耐久性と自然な艶感を保てるよう仕上げました。
修理後は、黒ずみやシミがあったネームタグやポワニエも明るく整い、全体の印象がぐっと引き締まりました。ヴェルニの艶感とも違和感なく調和し、修理していない持ち手部分とも違和感がないかと思います。





色補修のメリットと注意点
色補修を行う最大のメリットは、ヌメ革部分を新品のように美しく整えることができる点です。特にバッグの顔とも言える持ち手部分が綺麗になることで、バッグ全体が若返ったような印象になります。
一方で、色付けをしたヌメ革は「エイジングしない」という点にご注意ください。自然な風合いや経年による色味の変化を楽しみにしている方にはおすすめできません。また、あくまで表面を着色する方法ですので、深いシミやひび割れなどは完全には消せない場合もあります。
まとめ:ヴェルニバッグのヌメ革修理は「選択と理解」が大切
ヌメ革は非常に魅力的な素材である一方、デリケートであることから取り扱いには注意が必要です。特に日常的に使用するバッグでは、徐々にシミや汚れが目立ってしまうことも珍しくありません。
今回のように、「持ちたいけれど見た目が気になる」というお悩みに対しては、色補修という選択肢があります。ただし、その代わりにナチュラルな経年変化は楽しめなくなるため、ご依頼前にしっかりご説明とご納得をいただいたうえでの対応が大切です。
当店では、それぞれの素材やご要望に合わせた最適な修理方法をご提案しております。ルイ・ヴィトンのヴェルニシリーズやヌメ革の修理でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。経験豊富な職人が一つひとつ丁寧に対応させていただきます。
※修理内容や状態によってはご希望に添えない場合もございますので、まずは写真添付のうえでお問い合わせください。