今回はバッグの内側で良くあるお悩みです。
上の写真を見ても分かるように、ボロボロと革が剥がれてしまっているような状態になる事があります。
この状態では使う事も考えてしまいますので、しまい込んでしまったり、捨ててしまおうとお考えの方もいると思います。
結論から言いますと、内装交換すれば今後も使い続ける事が出来ます!
写真で修理前と修理後の状況もお伝えしますので、最後まで見て頂ければと思います。
なぜ内側の革が剥がれた?
革生活にご相談頂く内容として、
「内側の革が剥がれてしまったけど直りますか?」
と言われる事があります。
実は、この内側に使われている素材は「革」ではなく「合皮」となります。
バッグや財布で良く言われる「革」はいわゆる「本革」です。牛などから作られる本当の革の事です。
革に似せて人工的に作られた素材は「合皮」です。
本革は高価で耐久性もあり、しっかりメンテナンスをしていけば50年以上使う事も出来ます。
合皮は安価でほぼメンテナンスが簡単なのですが、劣化が早いのが特徴です。この劣化は「加水分解」と呼ばれ、症状によってはべたつきが出たりボロボロと剥がれたりする現象が起こります。
今回ご相談のバッグもそうですが、外側は「革」で、内側は「合皮」と言う構造になっている事が多くあります。
と言う事で、内側は革ではなく合皮素材だった為に剥がれが起こったことがお分かりになったかと思います。
合皮素材は修復方法が限られます
合皮素材についてですが、ボロボロ剥がれたりベタベタしてきた場合に塗料やクリーナーを使っての修復は不可能となります。
加水分解が進行した合皮は元に戻る事はない為、交換するしか方法がありません。
合皮交換の注意点
全ての合皮を交換出来る訳ではございません。今回のような内側のパーツであれば可能ですが、バッグの外側が合皮の場合は修理をお断りしております。
合皮素材を長く使う方法は?
合皮素材は人工的に作られていますので、種類等によってもどの程度持つのか大きく変わってきます。
最近の合皮は以前よりも耐久性が上がっているのも特徴です。
加水分解が起こらなければ長く使い続ける事が出来ますので、気を付けるのは「水分」となります。
合皮素材の表面は水滴には強いのも特徴ですが、素材の内部に水分が浸透してしまうと劣化が一気に加速してしまいます。あとは高温多湿の日本では難しいのですが、湿度の高い所も嫌います。
ざっくり言うと合皮は土台となる素材(不織布など)に別の素材(樹脂)を貼り合わせたような作りになっていますので、水分を含んでしまうと剥がれが起こってしまいます。
剥がれた合皮を外して生地に交換
それでは実際の修理方法ですが、このようなバッグは外側のパーツと内側のパーツがありますので、内側のパーツだけを外して新たに作り直した物と交換する作業になります。交換するのは基本合皮だけですので、革で作られている部分は再利用致します。
今回ご紹介するバッグの情報ですが、
【ブランド名】GIANNI NOTARO(ジャンニノターロ)
【素材】外側:本革 内側:合皮
となります。
外側はこのようなバッグです。
外側は全く問題なしですね。ここだけ見ればまだまだ使える状態なのですが、内側は下記の写真となります。
かなり加水分解が進行しており、特にバッグ上部は剥がれて合皮の土台部分が見えてしまっています。
これを内装交換しますと、
このような仕上がりになります。内ポケットやタグの部分は本革素材が使われていますので再利用をしております。
合皮だった部分につきましてはシャンタン生地の黒で張替えをしております。
合皮からシャンタン生地にした理由
合皮部分をまた合皮で張り替えてしまいますといづれ同じ現象が起こってしまいますので、また張り替える費用が発生してしまいます。
ですが、今回のように生地にしてしまう事で、2度と同じ事が起こりませんので大きなメリットとなります。
生地も永久に使える訳ではないですが、合皮よりは長持ちしますのでこのような修理をおススメしております。
まとめ
このような修理が出来る事を知らずに捨ててしまった方もいると思います。
捨てて新しいバッグを購入するのも1つの方法ですが、直せば使える事も知って頂き検討材料にして頂ければ限りある資源を有効活用出来るかなと思います。
大変ご好評頂いている修理です。
是非修理をご検討頂ければと思います。