革生活でのエナメル製品修理についてまとめましたのでご紹介したいと思います。
エナメル製品でトラブルが起こった時にご自身でメンテナンスや修理を試みたい方もいると思いますが、この内容を読んで頂き出来る出来ないを判断してみてはと思います。
当店のような修理専門店にお任せしないと直らないトラブルもありますので、是非最後までご覧下さい。
エナメル製品のトラブルについて
エナメル素材はバッグや財布や靴など多く使われていますし、ハイブランドでも使われている素材となります。
そんなエナメル素材ですが、大きく3パターンのトラブルに悩まされる事があります。
- 変色(黄ばみ)
- 色移り
- べたつき
この3パターンですが、1つずつどのように起こっているのかを説明します。
変色(黄ばみ)
エナメルの変色については、当店ブログで何度も書いているトラブルです。
日焼けして黄色くなったと思われる方も多いですが、エナメルは「黄変」する特性を持った塗料となりますので、経年劣化や紫外線などの影響によりエナメル膜が黄色くなる現象です。
まずは問題のないエナメル製品であれば下記のようになります。
上の図はエナメル革を横から見るとこんな感じの構造になっていますと言う図です。(ざっくりです。)
まず一番下が土台となる革です。これは牛革や羊革などです。
その上に塗膜層があります。例として青の色付けがされています。
さらにその上にエナメル層があります。これは透明ですので、革を上から見ますと塗膜層の青が見えていると言った感じになります。
ここから本題の黄ばみが出たトラブルの革はどうなっているかです。
上でも書きましたが、経年劣化によりエナメルが「黄変」した場合、エナメル層が黄色っぽくなります。
色も通さない程の黄色ではなく、透明感はあるので黄色のフィルムみたいなイメージです。
このようになると、塗膜層の青とエナメル層の黄色で実際に見える色が緑っぽくなるのです。
実際のエナメル財布の写真ですとこんな感じです。左側に少しだけ見えていますが、元の色は青系なのですがエナメル部分は緑っぽく見えてしまっています。
エナメルの黄ばみは自分で直る?
エナメルの黄ばみがどのように起こっているのかわかって頂けたと思います。
答えは「NO」です。
黄ばみはエナメル膜が問題ですので、外側を拭いても落ちる事はないです。また、市販のエナメルクリーナーやエナメル補助剤のようなメンテナンス用品でも直りません。
黄ばみが出てしまった場合は専門店にてエナメルの染め直しやリカラーをするしかないので、エナメル修理が得意な当店にご相談頂ければと思います。
色移り
次に「色移り」についてです。
色移りは近くの革製品やその他製品にエナメル部分が密接していると、エナメルがその色を吸収してしまうのが原因となります。
エナメルに密接していなければ絶対に起こらない現象です。ですので、使用時や保管時に気を付けていれば防ぐ事が出来るトラブルでもあります。
上の図が「色移り」した場合です。
左側も右側もエナメルの表面を見ると同じように見えますが、左側は表面に汚れ(色)が付着している状態で、まだエナメル層には吸収されていない場合です。
右側は汚れ(色)がエナメル層に吸収されてしまっている状態です。勿論この両方の場合もあります。
エナメルの色移りは自分で直る?
答えは「YES」でもあり「NO」でもあります。
上の図で左側の状態であればご自身で落とす事が可能です。落とし方としては固く絞った布巾でエナメルの表面を拭き上げるだけです。
エナメルの色移りが「消しゴム」や「除光液」で落ちたと言う事を紹介している方もいますが、恐らく表面に付着した汚れ(左側)で留まっていた為に落ちたと推測されます。
※消しゴムや除光液を使って落とす事は絶対やめて下さい。エナメルの表面が傷つく可能性が大です。
一方、右側のエナメル層に吸収されてしまった汚れ(色)は落とす事は不可能です。上の図を見て頂いても分かると思いますが、エナメル層の内部に吸収されてしまっている為、表面を拭いても取り除く事は出来ません。
写真では3ヶ所の色移りと思われる黒ずみがあります。もう少しアップで見ますと、
乾拭きで拭いても落ちませんでしたが、水拭き(固く絞って下さい)をしますと、この3ヶ所の内の2ヶ所は除去出来ました。
①はエナメル層まで吸収されてしまった状態、③はエナメル層の上に留まっていた状態となります。②は若干ロゴ部分に黒ずみが薄っすらと残っているようにも見えますので、①と③の中間位です。
「消しゴム」や「除光液」で落ちたと思われるのは②や③の状態だったからで、①だと絶対に除去は出来ません。
※何度も書きますが、「消しゴム」「除光液」は使ってはいけません。これで落ちる汚れは水やクリーナーでも落ちます。
拭いても落ちない色移りは専門店にて修理をおススメ致します。
べたつき
最後に「べたつき」についてですが、こちらもエナメルの経年劣化や熱や湿度による影響で起こる現象となります。
エナメルは熱や湿度に弱いです。
エナメルに影響があるレベルですと触った感じがペタペタするようなイメージです。エナメル製品自体が乾燥するとべたつきが軽減される場合もあります。
べたつきについては図は作っておりませんが、過度な熱や湿度の環境下で保管されていると起こりやすいトラブルとなります。
べたつきが出始めると写真のように埃やゴミが付着しやすくなります。
エナメルのべたつき自分で直る?
答えは軽度であれば「YES」、重度であれば「NO」です。
軽度はエナメル製品を触ると少しペタペタくっ付く感じがある程度です。この位であれば初期状態ですので市販のクリーナー等でべたつきが軽減される可能性が高いです。
但し、べたつきが出ている時点でエナメルとしては劣化がそれなりに進行している状態ですので、早めに専門店での修理をおススメ致します。
埃も付くし触ると手もベタベタするような場合はクリーナーでは対処出来ませんので、エナメル表面に強い圧が掛からないようにして専門店に修理を相談して下さい。
かなりべたつきがある場合はエナメル自体が不安定な状態ですので、圧が掛かるとエナメルの表面が変形する場合があります。
実際に写真の財布をエナメル専用のクリーナーでメンテナンスをしますと、
こんな感じになります。これは当店にご依頼頂かなくても、市販のクリーナーを購入してエナメルの表面を拭き取るか、もっと簡単にであれば固く絞った布巾で拭き取っても大丈夫です。
拭き取った結果、写真くらの状況になればまだべたつきは軽度です。重度の場合は埃が取り除けない(ベタベタして上手く拭けない)感じになります。
軽度であれば、この後日陰干しをして財布の湿気を軽減すればべたつきが感じられないレベルになる事もあります。
ただ、やはりべたつきはエナメルの劣化が原因で起こる現象ですので、早めに専門店で修理して頂いた方が良いです。べたつきがあまりに重度な状態ですと、修理をしても仕上がりが悪くなる場合もあります。
その他にもエナメルの剥がれも多い相談ではありますが、多くはこの3パターンになるかと思います。
革生活では、この3パターン全て修理・修復が可能となります。
エナメル製品の修理・修復事例
それでは次にどのように修理・修復が出来るのか写真付きでご紹介を致します。
革生活では大きく2パターンのご提案があります。
- リカラープラン
- カラーチェンジプラン
エナメルのリカラープラン
リカラープランは「エナメルを元の色に近付ける修理」となります。
ルイヴィトンよりクラッチアナの修理事例
元の色はデュンヌかなと思いますが、かなり黄ばみが出てしまいましてほぼ黄色か黄土色のような色に変色していました。
蓋に隠れている部分はあまり変色していない状態でしたので、この辺を参考に調色をしてエナメル全体を仕上げております。
Manolo Blahnik(マノロブラニク)よりパンプス修理事例
マロノブラニクはイタリアの靴ブランドとなります。
なぜか片足のみ色が変わってしまい、左右でかなりの色違いとなってしまっていました。
こちらも当店のリカラープランにて修理をしております。
ルイヴィトンより財布の修理事例
元の色より大きく変化してしまったヴェルニの財布になります。今回はエナメル部分のリカラーとマチ部分もスレ傷で見た目が悪くなっている為にリカラーをしています。
※内側(蓋裏)はそのままです。
黄ばみや色移り等のトラブルを革生活のリカラープランで修理すれば綺麗に使えるバッグへ生まれ変わります。
エナメルのリカラープラン修理の修理事例は他ブログでも紹介しておりますので、下記も合わせてご覧下さい。
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エナメルのカラーチェンジプラン
カラーチェンジプランは「エナメルを別の色に変更する修理」となります。
元の色には戻さずに別の色にする事で気分一新になる事や、また黄ばみが出て使えなくなるなら濃い色に変えたいと言ったご要望にお応えしたプランです。
カラーチェンジをしますとファスナーやエナメル以外の部分との兼ね合いも出てきます。エナメル以外の部分については選択オプションで追加する事により修理対象になりますので、ご自身で追加するしないは選択する事が出来ます。
ルイヴィトンよりコロンバスを黒へカラーチェンジした修理事例
こちらはルイヴィトンのヴェルニラインよりコロンバスの修理事例となります。黒(パール入り)へのカラーチェンジをご希望となりました。
エナメル素材は経年劣化や紫外線等により徐々に黄変(黄ばみ)が進行していきますが、黒にカラーチェンジする事で仮に黄ばみが出たとしても目立たないメリットがあります。
エナメルのカラーチェンジプラン修理は他ブログでも紹介しておりますので、こちらも合わせご覧下さい。
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エナメル修理の注意事項について
エナメル製品の修理は革製品修理の中でも少し特殊な塗料での修理になりますので、修理についての注意事項がございます。
エナメル修理に関する注意事項も合わせてご覧頂ければと思います。
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エナメル修理の注意事項エナメル製品(バッグ・財布等)の修理注意事項
当店でのエナメルバッグやエナメル財布の修理をご検討ありがとうございます。下記に修理での注意事項が明記されていますので、ご依頼時には熟読・ご理解の程を宜しくお願い致します。 修理事例をご覧になりたい方 ...
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簡単に注意事項を書きますと、エナメル修理が出来るのは「本革エナメル」のみとなります。「合皮エナメル」は修理が出来ません。
合皮エナメルは人工的に本革に似せて作られた素材で土台は生地(不織布等)になり、その上に樹脂塗料を貼り付けた物になります。合皮エナメルが劣化しますと土台の生地と樹脂が剥離を起こしたりしますので、ひび割れや剥がれが発生していまい元に戻す事が不可能な状態になってしまいます。本革エナメルと合皮エナメルを判断するのは非常に難しいですが、ハイブランド品でも合皮エナメルを使っている場合もあります。最終的には実物を見て・触って判断をしていますが、全てのエナメルが修理できる訳ではございませんのでご理解下さい。
バッグや財布には必ずステッチ(糸)があると思います。しかしエナメル修理ではステッチを隠しての作業が出来ませんので、ステッチにも塗料が付着する事になります。その際、ステッチの種類によっては毛羽立ちが発生して塗料で固まる事でザラツキが起こる場合がございます。
エナメル製品の修理価格について
エナメル製品の修理価格ですが、ご依頼品の状況や修理希望内容により大きく変わってきますので、ざっくりとした事しか書けません。
ですので、まずは当店のお問い合わせ・お見積り方法を確認して頂きLINEやメールにて無料見積りをして頂きたいと思います。
【エナメル財布】
エナメル部分(外側)をリカラーであれば、12,100円~ (パール入りは14,300円~)
エナメル部分(外側)をカラーチェンジであれば、15,400円~ (パール入りは17,600円~)
【エナメルバッグ】
当店のMサイズ(バッグ本体のタテ+ヨコ+マチ=40~70cm未満)ですと、
エナメル部分(外側)をリカラーであれば、22,000円~ (パール入りは24,200円~)
エナメル部分(外側)をカラーチェンジであれば、29,700円~ (パール入りは31,900円~)
【エナメル靴(エナメルパンプス)】
エナメル部分(外側)をリカラーであれば、12,100円~ (パール入りは14,300円~)
エナメル部分(外側)をカラーチェンジであれば、15,400円~ (パール入りは17,600円~)
あくまでも参考価格となります。エナメルの状況により変動します。
エナメル修理のまとめ
今回ご紹介した内容で、エナメル製品の3大トラブルでもある変色・色移り・べたつきについてご理解頂けたかと思います。
ご自身でメンテナンスする場合は出来る事が限られてはいますが、どのようなトラブルなのかが分かれば出来る限界も理解できるかなと思い書いてみました。
エナメル製品は特殊な塗料を使った革になりますので、ご自身で補色や色付けをするのはまず無理だと思いますので、色付けや補色を伴うような希望であれば当店にご相談頂ければお客様に代わってメンテナンスを致します。
また、エナメル修理が出来る専門店も増えてきているように思いますが、他店で修理したバッグや財布を再度修理依頼してくる方もいるのが現状です。
エナメル修理は難易度が結構高い修理ですが、当店では10年以上従事していますので是非ご検討頂ければと思います。